2012年3月31日土曜日

ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市のデザイン編 目次


リスボンの都市のデザインについて気づいた点について以下の7つの視点からメモしました。















ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市の構造編



・概要

名称   :リスボン
国       :ポルトガル共和国
人口   :547,631 (2011)
面積   :84.8 km2
ポルトガルの首都。

参考資料
wikipedia 


都市構造

・地形
起伏に富む地形。テージョ川に面するバイシャ地区は周囲と比べて平坦で低い土地で、ロシオ広場やアウグスタ通り等街の顔となる外部空間が集まる。

・水系
一見すると海のようなテージョ川に面する。1755年のリスボン大震災の際は川を遡上する津波によって大きな被害を受けている。


・緑地
エドゥアルド7世公園及びリベルターデ通りの線形の緑地が目立つ。南西にはモンサント森林公園がある。


・街路網
テージョ川に面するバイシャ地区は1755年リスボン大震災に伴う津波被害を受けた後、整形の街路網を持つ地区として復興された(点線の範囲)。両側のバイロ・アルト地区、アルファマ地区はバイシャ地区に比べ標高が高く、複雑な街路網が残る。



・路線網
鉄道(左図)、地下鉄(中央)、トラム・ケーブルカー(右図)の路線網が整備されている。
 

トラムはレトロな車体。


ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市のデザイン編 その1

1. 街のテクスチャ

ポルトガルはヨーロッパでも有数の大理石産出国らしく、街の至る所に大理石が用いられていた。


街歩きをしていると5cm角程の大理石が舗装材として使われているのをよく見る。色の違いを利用してモザイク画のようにデザインされていた。

強い日差しを反射しまぶしいほど明るい通りとなっている。

外壁に鮮やかなタイルを用いている住宅も多い。


タイルはアズレージョと呼ばれ、その起源はイベリア半島がイスラーム勢力によって侵略された8世紀にまで遡る。
イスラーム建築で多用された幾何学模様のアズレージョの技法はヨーロッパに伝わっていった。
その後16世紀にはイタリアのマジョリカタイル、オランダからフランドルタイルの影響を受けながらポルトガルに根付いていったという。




土地に根差した素材を大切にすることで、独特の景観として成熟させた例だと感じた。


参考資料
ポルトガルの石材産地について
森田一弥建築設計事務所 「ポルトガルのアズレージョ」
Azulejo Market HP


ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市のデザイン編 その2

2. 都市を貫く線形の緑地

リベルタール通りからエドゥアルド7世公園にかけて帯状の緑地が整備されている。
上の写真は上空から南方向に公園と通りを撮影したもの。

エドゥアルド7世公園では道路に挟まれていながらも両側の土地を盛り、中央に堀のような空間を作ることで公園内から車道への視線をカットしていた。
南に向かって下るような地形で、市街地を立体的に臨むことができる。

公園内部段差や植栽によって幾つかに分節され、異なる環境を作っていた。




ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市のデザイン編 その3


3. 海と市街地の明快な関係

1755年のリスボン大震災及び津波によってテージョ川に近く海抜が低かったバイシャ地区は壊滅的な被害を受け、
その後の復興計画ではそれまでの複雑な街路網から一転して整然としたグリッド上の街路網が整備された。













海に直行するように設けられた直線の街路により、海岸から800m程離れた街の中心ロシオ広場まで水辺の空間からの明確な軸線が整備されている。
特にアウグスタ通りでは勝利の門、ジョゼ1世騎馬像といったランドマークと相まって海と市街地の強い繋がりが保たれていた。




ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市のデザイン編 その4


4. 起伏によって生まれた路地の多様さ

リスボンは起伏が激しく、斜面に沿って高密な住宅、複雑な路地、階段が多い。




飾り気のない路地は計画的にデザインされたものではないが、その場所の生活を垣間見ることができる路地を歩くのはなかなか面白い。

私的な要素が入り込んだ公共空間は、そうでないものと比べて親しみのもてる心地よいものになっていることが多いなと考えることが近頃多い。
誰のものでもない公共の場所ではなく、そこに生活する人と自分の場所という感覚が大事なのかもしれない。


ポルトガル・リスボンについてのメモ 都市のデザイン編 その5


5. 万博跡地に整備される近代的な街並

リスボンでは1998年に海をテーマにした万博が開かれており、
その会場となったサントオリエンテ駅周辺にはカラトラバによる有機的造形の駅舎、曲線を多用した集合住宅やショッピングモール、アルバロ・シザによるパビリオンメイン会場、海を臨むロープウェイなど旧市街地とは全く異なる近代的な街並みが築かれている。
曲面をもつ集合住宅。地上面には謎のキャンチ。


オリエンテ駅はカラトラバ設計によるもの。

 ガラスキューブはカラトラバがよく用いる素材。
 鉄骨の接合部もさり気なく仕上げられている。



テージョ川沿いは歩行者空間の整備が進んでいる。

波打つ公園。

川沿いにはロープウェイが整備されている。
敷地内に高低差があるわけではないが水辺の空間を様々な角度から楽しむ、
ロープウェイのポール毎に緑地を整備するキッカケになるなどの効果もあるのではないだろうか。