バルセロナの都市のデザインについて以下の6つの視点からメモしました。
2012年3月27日火曜日
スペイン・バルセロナについてのメモ 都市のデザイン偏 その2
2. 都市構造とランドマーク
・ジャンヌーベル設計 「アグアス・デ・バルセロナ(バルセロナ水道会社)の本社ビル」
軒並みがそろった市街地の中にあって一際目を引く円型の塔。ジャンヌーベル設計のバルセロナ水道会社本社ビルは22@地区の西端、複数の放射状街路が交差するノードに位置する。
22@地区はバルセロナ都心部の東側、ポウレノウ地区内の約200haを占める区域。
以前は工業専用地域だったポウレノウ地区に、住宅やIT関連企業、大学などを取り入れることで地区の産業転換を図ろうという計画を実施している。
スペインでは工業専用地域コードとして22aという記号が用いられるが、その場所を再生するという意味を込め22@と名付けられたという。
22@プロジェクトをコーディネートする「22@Barcelona」はバルセロナ市によって100%出資によって2000年に設立された組織である。
バルセロナに本社を置くメディアプロ(Mediapro)の社屋やPompeu Febra大学のメディア学科といった情報関連の施設が集積する「オーディオビジュアルシティ」が整備されている。
話をジャン・ヌーベルの建築に戻す。
中心市街地に近い港湾や河川沿い、操車場跡といったブラウンフィールドにメディア関連企業や文化施設を集積する試みはデュッセルドルフ(メディエンハーフェン)、ハンブルク(ハーフェンシティ)、ケルン(メディアセンター・ケルン)などで行われているが、
共通して既存の街並みとは全く異なる建築を挿入する手法が見られる。
情報を発信する・新しいメディアを創造するというコンセプトがこのような造形を生み出しているのかもしれない。
ジャン・ヌーベルの本社ビルは地区のエッジ、放射状道路が交差する(動線が交錯する)ノードにあり、そこに効果的なランドマークを挿入するという手法は教科書的で面白い。
このような外壁に重ねられた通気性のある膜は、高層ビルにおいても窓を開けることができる環境を作り、日照に合わせて外壁の形態を変えたりすることができる点でのメリットが考えられる。
また、外側に重ねる膜の素材によって曲面(ETF等)や複雑な壁面を作ることも可能であり、光の演出と合わせてランドマークとしての機能を高める可能性もあると感じた。
・ ヘルツォーク・ド・ムーロン「フォーラムビルディング」
2004年5月から9月までの五か月、ポウレノウ地区においてUNESCO後援による世界文化フォーラムが開催された。
その会場として設計されたのがヘルツォーク・ド・ムーロンによるフォーラムビルディングで、現在は自然科学に関する展示を行っている。
一辺180m,高さ25mの3角形の独特のボリュームからは周辺の街路網との関係が読み取れる。既存市街地の構造と後ろに広がる海岸、あるいはオーディトリオ公園(parc dels auditorios)との関係を重視した結果かもしれない。
一辺180m,高さ25mの3角形の独特のボリュームからは周辺の街路網との関係が読み取れる。既存市街地の構造と後ろに広がる海岸、あるいはオーディトリオ公園(parc dels auditorios)との関係を重視した結果かもしれない。
建物の壁面はガラス、細かい模様がつけられたステンレス、細かい凹凸を持つコンクリート(?)でかなりマッシブな印象。
かなり大きなボリュームだが地上部分をピロティ―にして通り抜けができるようにすることで背後の公園への動線を保っていた。
背後のオーディトリオ公園は航空写真を見たときのインパクトが大きく、かなり期待していたのだが、
海岸沿いの排気塔の写真。
感心したのはこの排気塔が海岸に直行する街路に対してもランドマークとして働きかけていること。
単純な排気塔ではなく周囲との関係を意識した配置、造形に感心した。
創造都市バルセロナの文化政策 文化と経済が共に発展するための戦略
討議:バルセロナ・オリンピック 都市の成長と発展
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スペイン・バルセロナについてのメモ 都市のデザイン偏 その1
1. グリーンウェイ
・セルダプランによって生まれた広幅員の街路網を活かした線形の公園
車交通を他の街路に集約し、道路の縮小と公園としての整備が行われていた。
視線が抜けすぎないように、噴水や植栽、アートによって公園を細かく分節している。
車交通を他の街路に集約し、道路の縮小と公園としての整備が行われていた。
線形の公園には子供の遊ぶ場所、ベンチ、視線の抜けを抑えるアート・噴水・植栽などによって単調な空間とならない工夫がなされている。
視線が抜けすぎないように、噴水や植栽、アートによって公園を細かく分節している。
ウィリアム・H・ホワイトは著書「都市とオープンスペース」において、
同面積の公園を比較した場合、線形の公園の方が周辺の市街地に接する長さが大きくなる利点について言及していた。
山口、横張(敬称略)による「北米におけるグリーンウェイ計画の変遷と社会的背景」では、
グリーンウェイの機能として、以下の5点が挙げられている。
①レクリエーション利用及び健康増進の場
②洪水調整のための河川沿い緑地の保全
③生態系の保全
④歴史的・文化的遺構の保存・活用
⑤自動車道に代替する交通路
道路に多機能なグリーンウェイを組み込んでいく発想は興味深いと感じた。
参考資料
山口理枝子・横張真「北米におけるグリーンウェイ計画の変遷と社会的背景」
ウィリアム・H・ホワイト「都市とオープンスペース」鹿島研究所出版会
・海岸沿いの車道、公園、海岸のと市街地の一体感
海岸沿いの通過交通は地下化され、アクセス道のみ地上に残されている。
車道の両脇には分厚い緑地帯及び公園が整備されており、線形の緑地が設けられている。
地下道への入り口。入口の周辺は分厚い植栽で覆われている。
海岸に面する植栽。強い風から草木を守るデザイン。
公園には運動器具やスケートボーダーの為のスペースが設けられている。芝生のサッカー場も設けられている。運動をする人が連なりやすい仕掛け。
市街地と海岸沿いの緑地が風除林としてだけではなく、市街地との繋がりを重視した公園としてデザインされていることで海岸に人があふれる光景が生まれていた。
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スペイン・バルセロナについてのメモ 都市のデザイン偏 その4
4. セミパブリックスペースの点在
大きな街区には中庭のような空間が生じており、場所によってはそこを公園のように公開している。“セミ”を付けたのはこのようなスペースがゲートを有しており、夜間は閉ざされてしまうことによる。
大きな街区には中庭のような空間が生じており、場所によってはそこを公園のように公開している。“セミ”を付けたのはこのようなスペースがゲートを有しており、夜間は閉ざされてしまうことによる。
誰の為でもない公共空間ではなく、誰かの場所であるスペースをみんなで使うという感覚が、良好な維持管理や好ましい使用に繋がるのかもしれない。
スペイン・バルセロナについてのメモ 都市のデザイン偏 その3
3. コミュニティサイクル
バルセロナでは2007年よりコミュニティサイクル制度「bicing」が導入されている。
bicingをバルセロナ市は無償で導入している。資金を提供しているのは、野外広告大手の米クリア・チャンネル・アウトドア社で、同社は車体や駐輪場などの広告販売権を得る引き換えとしてこの資金を提供しているという。
自転車の台数は1500台(2007年7月)から5700台(2008年10月)へと増やされた。
図を見て分かるように、コミュニティサイクルの駐輪場は中心市街地を含む直径4km程の範囲に集中的に設けられていることがわかる。同時に、自転車レーンの整備も行われている。

都市のデザイン偏その1で触れた線形の公園には自転車道が併設されている場合が多い。
使用に際しては事前にパスを入手する必要がある。パス所有者は期限内何度でもサービスを利用できる。30分以内の利用であれば無料、上限は2時間。
Bicingの平均使用時間は17分、平均走行距離は3kmであるという。
2008年の年間パスの料金は24€、所有者は17万人を超える。
サービス利用者がbicing開始前に利用していた交通機関を調べると、bicing利用者の内9.6%が自動車とオートバイからbicing に切り替えたことが示されている(交通量・排気ガスの低減に貢献)。
サービス利用者がbicing開始前に利用していた交通機関を調べると、bicing利用者の内9.6%が自動車とオートバイからbicing に切り替えたことが示されている(交通量・排気ガスの低減に貢献)。
車両の維持管理を行う職員は200人程度。
この平均利用時間と平均走行時間の統計が興味深い。
内閣府大臣官房政府広報室によって行われた「歩いて暮らせるまちづくりに関する世論調査(平成21)」において、
普段の生活で歩いていける距離に関する統計では約5割の人が1km未満と答え、
2km以上と答えた人は全体の9.7%であったことが述べられている。
普段の生活で歩いていける距離に関する統計では約5割の人が1km未満と答え、
2km以上と答えた人は全体の9.7%であったことが述べられている。
これを考慮すると、歩いて移動できる中心市街地の範囲は直径2km程度と考えるのが妥当であるが、これにコミュニティサイクルの仕組みを導入すると、その範囲が直径5~6km程度まで広がることになる。
これは中心市街地周辺に位置しながら動線が波及することがなかった場所に新たな活力を見出す可能性を有している。
これは中心市街地周辺に位置しながら動線が波及することがなかった場所に新たな活力を見出す可能性を有している。
導入に際して行政の出費が少なく、また利用状況によって柔軟に台数、駐輪場の場所を変えていける仕組みも他の公共交通機関と大きく異なる。
創造都市バルセロナの文化政策 文化と経済が共に発展するための戦略
バルセロナ(スペイン)の『ビシング』自転車
歩いて暮らせるまちづくりに関する世論調査
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