今回は東部港湾再開発地区の中でも、KNSM島、ジャワ島、ボルネオ・スポールング地区の建築・公共空間のデザインについて詳細にメモしてみた。
大きく以下の3つの視点から各地区を比較し、特徴を並べた。
Ⅰ. 各島のコンセプト
Ⅱ. 公共空間の質 通りと広場・水辺空間
Ⅲ. 建築の差異
Ⅰ. 各島のコンセプト
マスタープラン:スータース 総住戸数1510
運河によって島を5個に分節。島の中央に中庭を設け、それを囲むように中層アパートが並ぶ。
マスタープラン:ヨー・クーネン 総住戸数1466
細長い島の中央にメインストリートを設け、その両側を大きなボリュームが並ぶ。
マスタープラン:west8 総住戸数2152
3層テラスハウスと、シンボリックな造形の中層集合住宅を提案。
求められた住個数を低層住宅を織り交ぜて実現するためには高密度の集合住宅が重要だった。
(中層集合住宅については、巨大なボリューム活かし地区のランドマークに成りうるシンボリックな形態とした点が興味深い。)
マスタープラン:OMA
建築形状によって大きく2つのエリアに分けることができる。
地区の西側には中層低密、サイコロ状の集合住宅が均等に並ぶ。
一方地区の東側は中低層の細長い集合住宅が均等に並ぶ。両地区の間には分厚い芝生の広場が設けられている。
Ⅱ. 公共空間の質 通りと広場・水辺空間
・ジャワ島
住棟に囲まれたプライベートな雰囲気を持つ中庭に比重を置く。
中庭には店舗・飲食店は見られず、来街者が集うような空間ではなかった。
特に南側の通りではその傾向が顕著。車道横の広場は運河によって分断され、水辺の遊歩道としての機能を果たせていない。
島を分節する運河には特徴的な橋が架けられるもその規模、デザイン性の弱さから地区を印象付けるには至らないと感じた。
・KNSM島
島の中央に大通りを設け、その両側をスーパーブロックの中高層住宅が囲む。
広幅員の通りにはスーパーブロックのスケールに合った高木も植樹されている。
・ボルネオ・スポールング島
2~3層の住宅とD/H1:1程度の街路により、セミプライベートな外部空間を形成している。
ボルネオ島では南側遊歩道に沿って高密・多様な植栽が設けられている点が他島と異なる。
通りの舗装の工夫し、坪庭兼ガレージを通りに対して開くことで、街路に対する私的空間の溢れ出しを誘発している。これにより公園と庭の中間のような空間を実現している。
これにより建築形状に変化を生まれているのと同時に、スポールング島に繋がるランドマーク的な橋への視覚的な繋がりを作っている。
島の東側には中央を貫く線形の公園が設けられている。
・アイ プレイン
ほぼ正方形の住棟の間には小さな緑地と子供の遊具が設けられている。
西側の住棟に面した水辺はシンプル。2つの池が新たに付加されている。
西側の住棟に面した水辺はシンプル。2つの池が新たに付加されている。
東側の細長い住棟の間には
①車の進入可能な街路、
②私的な庭園と緑地、
③タイル舗装がなされた広場
等、外部空間にいくつかのバリエーションが設けられている。
等、外部空間にいくつかのバリエーションが設けられている。
東側の川に面した部分には車道から一段下がった場所に遊歩道が設けられている。
東側の運河に面する通りにはOMA設計の住棟・スーパーマーケットがある。
Ⅲ. 建築の差異
・ジャワ島
水辺に対しては閉鎖的。一方で中庭に対しては私庭を延長し、パブリックな庭園との親和性を高めている部分もある。
ファサードにはいくつかのバリエーションが設けられているが、建設コストを抑えるため同じデザイン、ボリュームが繰り返されている。運河沿いには細長いファサードが並ぶ。地区におかれていたパネルからは、アムステルダムの歴史的町並みを参照しようとした意図が見える。
・KSNM島
島の東端にはヨー・クーネンによる円形の集合住宅と低層、低密の集合住宅が並ぶ。
・ボルネオ・スポールング島
中層集合住宅と低層テラスハウスからなる。
中層集合住宅は住戸数ノルマを満たしつつ、シンボリックなボリュームにより地区のランドマークとしても機能している。(…Three immense sculptural blocks take their place as landmarks in the vast expanse of houses. From west 8 HP)。
島の軸線から角度を振ることにより低層住宅との差異を強調し、ランドマークとしての効果を高めている。
ボルネオ島の低層住宅は同様の建築デザインが繰り返し用いられているが、植栽、多様な舗装、島を鋭角に貫く線形広場により単調さを解消しているのは前途した通り。
全ての水辺に駐車場と合わせた遊歩道が整備されている。
ボルネオ島に比べ、スポールング島では住戸のタイプがより多様で、通りに対いて様々なファサードが並ぶ。 地区内の運河に面する住宅は、canal houseの名に相応しい特徴的な景観をなす。
南側の水辺にはボルネオ島に繋がる2つの橋も整備される。
南側の水辺にはボルネオ島に繋がる2つの橋も整備される。
参考資料
West8 HP
・アイ プレイン
両地区でピロティを持つ住棟が効果的に用いられていると感じたので取り上げてみた。
①軸線とピロティの操作
東西地区を繋ぐ軸線を強調する
東側集合住宅の一つはこの軸線上に立っており、軸線上と重なる部分だけピロティとなっている。
②三角形の広場を囲むピロティ
広場のスケール、囲み感を調節する
平行に並ぶ細長い集合住宅を横断するように、また異質の軸線を持つピロティ建築が重ねられている。
広場のスケール、囲み感を調節する
平行に並ぶ細長い集合住宅を横断するように、また異質の軸線を持つピロティ建築が重ねられている。
一階部分をピロティとしたことで、南側の住棟への動線が保たれている。
加えて、2つの住棟とピロティ建築によって2.5辺が囲まれた中庭が形成されている。
西側地区の端はOMA自身がデザインした住棟兼商業施設。
ピロティにした一階に部分的にバー、コミュニティ施設、スーパーマーケットが挿入されている。
一階部分をピロティとし、船の穂先への視線が抜けることで地区の内側からも水辺の存在を感じることができる。
おわりに…東部港湾再開発をみて感じたこと。
ボルネオ・スポールング島の公共空間の質、ランドマークの設えには学ぶ点が多い。
アイプレイン地区では一見すると単調な街路網・建築だがピロティを用いた軸の操作、視線の操作等様々な工夫がなされていた。
各地区のコンセプトの違いが建築・公共空間のデザインの差異として如実に現れている点は強く印象に残った。
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