開発面積:750ha
総住戸数:14,000戸
計画人口:6万人
住戸平均床面積:100~120㎡
・概要
1960年代から70年代にかけて建設された大規模集合住宅地。
1933年CIAM憲章の機能主義とル・コルビュジエのデザインコンセプトに基づく未来都市が建設された。
一辺が80mの正六角形で構成される“蜂の巣型”の高層集合住宅が特徴。
当時ターゲットとしていた中間層ファミリー世帯の住宅嗜好や生活様式とのミスマッチ、
1975年のオランダ領スリナムの独立に伴う民族グループの流入、
失業者・低所得者層といったマージナル層の増加により、地域の社会的・経済的条件は悪化の一途をたどり、人種間の緊張も高まった。
管理の行き届かない共同スペースの多さや単調で死角の多いデザイン的欠陥と相まって、ヴァンダリズムによる街並みの荒廃、犯罪や麻薬・アルコール中毒の蔓延が深刻化した。
1982年にはアムステルダム市、同市南東区、パトリモニアム住宅協会からなる運営協議会(Administrative Consultative 通称“3者AC”)が設立され、同議会によって「高層住宅問題プロジェクトチーム」が結成された。
同プロジェクトチームにより様々な対策が試みられたが、ハードに偏った対策であったため目立った効果は認められなかった。
1986年には住宅協会(Housing Association
)によるワークグループ“future of Bijlmermeer”が高層住宅の取り壊しを含む5つのシナリオを提示。
1990年には同グループは“The Bijlmer
keeps changing”において高層棟の25%撤去、25%の売却、50%の改修を含む抜本的再生案を提案、
同年市が提案を承認し、3者ACからなる総合運営委員会(Administrative
steering Committee )を設立した。
・団地再生へのアプローチ
再生への取り組みとして、ハード、ソフト両面からの総合的なアプローチが行われた。
総合的アプローチの柱は主に、
①空間的再生
②社会・経済的再生
③管理面の再生
からなる。参考資料を基に以下にその具体的内容をまとめた。
①空間的再生
・住戸・住棟の改善及び14か所の駐車場等の撤去・多用途への立て替え。
・高層道路下の廃れたショッピングセンターの撤去
・高架道路の一部平面道路化
・ベルマミーア大公園の再修景
・大規模スポーツ施設“ArenA”の建設
・オランダ鉄道・メトロ両駅の全面改装
Bijlmermeer ArenA station 外観と内観、及び“ArenA”外観
高層の住宅に代わる低層の街並み
保存された高層棟、地区を貫くメトロの高架
②社会・経済的再生
住宅地再生は教育、雇用、文化、スポーツ活動を通じた住民のエンパワーメントが必須条件と考えられた。そのため、
・長期に安定した雇用の確保
・雇用に役立つ職業訓練の実施
・教育の充実と就労保障
に関わる取り組みが行われた。具体的には、
地域職業センター、女性トレーニングセンター、文化教育センター、芸術アカデミー、スポーツ施設などが建設された。
その他、撤去した駐車場跡地を活用して、商業ビルや小工場が建設されている。
学生寮も建設されていた。
③管理面の再生
管理組織の面で特筆すべきことは、それまでに本団地に14もあった住宅協会が1983年に新アムステルダム住宅協会へと1つに統合され、続いてこの住宅協会がパトリモニアム住宅協会に統合されたこと。
これにより高層中タックと関連施設の管理の一本化が可能となったばかりではなく、その再生事業がアムステルダム全体を統括するパトリモニアム住宅協会の管理事業となった。
住宅政策の地方分権により、地方自治体とパトリモニアム住宅協会の権限が強化され、国・市の干渉なく思い切った施策を講じることができた。
加えて、住みやすさの改善のため、
・犯罪の撲滅と安全の確保
・美観と清潔さの確保、ヴァンダリズムの撲滅
・各種施設を用いた教育・訓練によるエンパワーメント
等のため、管理人補助、リフトの監視員、団地見回り人を雇用し地域の管理に努めた。
・参考文献
角橋徹也, 塩崎賢明 著 「アムステルダム・ベルマミーア高層住宅団地の再生事業に関する研究 ~統合的アプローチによる持続可能なコミュニティの建設~」
・ベルマミーア新都心の建設
Bijlmermeer ArenA stationの周りには、コンサートホールHeineken Music Hall, サッカースタジアム、14のスクリーンを有するPathe ArenA, ショッピングモール、オフィスビルが連なる。
斬新なデザインの集客施設、高層のオフィスビル、特徴的なショッピングモール
新都心地区の歩行者専用道路、それに面するユニークな造形のオフィス建築
駅周辺の地図
新都市建設はベルマミーアの住宅需要の底上げ、同地区の雇用創出の場として期待されている。
しかしベルマミーアの求職者たちは教育、技能、言語等のハンディキャップを背負っているため、新都心アリーナで急増するオフィス、IT求人とはミスマッチを起こすという問題も生じているという。
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